2016年08月19日

地面に投げ捨てた

0416.jpg「だが一番大きな戦艦がほしいと言ったのは、おまえさんだからな」グレルディクはにやりと笑ってみせた。「水夫たちがあの巨体を運ぶ気を起こすまで、さぞかしたくさんのエールをおごってやらねばならんだろうな。陸送にあたっては船長も参加するしきたりは別としても」
「馬鹿げた習慣だ」バラクがうなるように言った。
「どうやら今週はついておらんようだな、バラク」グレルディクの笑みがますます大きくなった。
 ダーニクはこの二人の海の男を相手に、小枝で土手の砂地の上に図案をかいて、熱心に説明をはじめた。話が進むにつれて、二人はいっそう熱心に耳を傾けているようすだった。
 三人が話しあってから、まる一日後、二十数個の車輪をつけた、車体の低い船架がふたつ用意された。他のチェレク人が馬鹿にしたようすで眺めるなかを、二隻の船は川から船架の上に慎重に載せられ、紐でしっかり固定された。両船の水夫たちが平原に向かって船架を引きはじめると、馬鹿にしきった笑いはしだいに消えていった。馬上からそのようすを見ていたヘターは、少し考えこんだ後、かれらにたずねた。「何で人手に頼るのですか。ここには世界でもっとも多くの馬が集められているというのに」
 バラクは大きく目を見開き、神の啓示を受けたようなほほ笑みを浮かべた。
 バラクとグレルディクの船が、車輪のついた船架に載せられたときに発せられた嘲りの笑いは、アルガー産の馬に引かせたそれが、全力をふりしぼって数インチずつ船を引きずっていく人間たちを尻目にすいすい崖地に近づいていくのを見たとたん、怒りを含んだ不満の声に変わった。バラクとグレルディクはさらに効果を高めるために、かれらの水夫に甲板の上でエールを飲んだり、サイコロをふるったりして、存分にくつろいでよいと命令した。
 アンヘグ王は馬に引かせた巨大な船に乗ったいとこが、これみよがしに笑いかけながら通り過ぎていくのを、冷たい目で眺めていた。王の表情には心底からの怒りが浮かんでいた。「いくら何でもこれはやりすぎだ!」かれはかんしゃくを起こして、王冠をつかみ、。
 ローダー王は落着きはらった顔で言った。「わたしにはこれまでの人力で運ぶ方法がそれほどよいとは思えなくなってきたよ。汗水たらしてうんうん言うことに、何らかの深遠な理由があるにせよ、何といってもこちらの方が早い。それにわれわれは一刻も早く作業を終わらせたいのだ」
「だが不自然だ」すでに数百ヤードほど先に行ってしまった二隻の船に、怒りの視線を向けたまま、アンヘグはうなり声をあげた。
 ローダーは肩をすくめてみせた。「何だって最初は不自然なものさ」
「考えておくことにしよう」アンヘグはむっつりした声で言った。
「だが、あまり考えこまない方がよさそうだぞ。一マイル進むごとにきみの君主としての名声は下がっていくばかりだろう。バラクのことだから、崖地にたどりつくまで、きみの水夫たちにあの工夫を見せびらかしかねん」
「まさかそこまでは、せんだろう」
posted by bardnichole at 12:56| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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